前の章で、腸内環境がいかに大切か、またその環境はこれからの食生活で大きく変えていくことができることを学びました。
この章では、健康的で腸内環境を整え、また気になるダイエットにもつながるような食習慣について学習していきましょう。
食習慣=何を食べるかではない
食習慣を学びましょう、というと、どうしても「何を食べたらいいのか」「どんな成分が体にいいのか」ということにばかり意識が向きがちです。実際テレビや広告などでも、「これを食べると腸内環境が良くなる!」といった特集やキャッチフレーズを見かけることでしょう。
もちろん腸内環境にとっていい食品はありますが、その前に基本を確認していくことが大切です。
食べることそのものが腸の負担に
消化は非常に負担のかかる活動です。消化活動にはフルマラソン並みのエネルギーを費やすとも言われており、また摂取カロリー量を30%少なくすると寿命は50%も伸び、老化に関係する病気もかなり減るということが研究でわかっています。
これまで学習してきたように、腸の役割は与えられた食物から栄養素を取り出し、有害物を排出していくことです。ですが腸は非常に頑張り屋なので、たくさんの食物を与えられたからといって、「まあこれくらいでいいか」と適度に休息しながら排出だけしてくれるということはありません。
古来より身についてきた本能で、その食物から栄養素を残らず取り切ろうと活動しているため、たくさんの食物が与えられればその分活動しなければいけない量が多くなり、腸の負担が増大するのです。
あなたが家の大掃除をしなければならないとして、モノが少ないシンプルな家と、とにかくたくさんのガラクタがある家、どちらが掃除しやすいかといえばイメージしやすいでしょう。
「これが腸にいいと言われているから」といってむやみやたらに食べることは、掃除をしなければいけない腸にたいして、「このメロンあなた好きだったよね?」と言わんばかりに何100個ものメロンを家に運ぶようなものです。
これでは、腸はなんとか全てを食べきって捨てるべくオーバーワークになってしまい、掃除しきれずに残ったものから古くなり発酵したりして、有害物質を出すようになってしまい、結果腸内環境の悪化につながるのです。
少食・空腹時に食べる
そもそも腸の構造は、食べ物が少なかった頃の原始時代とあまり変わっていません。つまり、今より遥かに少ない栄養素でもきちんと生きていける作りになっているということです。
今では1日3食決まった時間に食べることがいいとされていますが、だからといって空腹でもないときに食べたり、過剰な量を食べることは上の例のように腸にとって非常に負担なことなのです。
便の成分のところでも学習したように、便のなかで食事の占める割合は決して高くありません。
便=食事 という認識が強いと、快便をするためには「いっぱい食べたほうが気持ちいい便が出る!」と考えてしまうかもしれませんが、そもそも排便は自然に発生するもので、たくさん食べなくても行われる活動です。
また、空腹感を感じると「モチリン」というホルモンが分泌されます。このホルモンの働きで小腸・大腸・さらには胃まで消化管全体の蠕動運動が高まり、排出する力が高まります。
少食にすることで負担そのものを減らせることに加え、空腹の時間を作ることで排便力まで高められるというように、「少食・空腹」は腸内環境改善の魔法の解決策といえます。